銀座7丁目の角のギャラリーは、フロアが一階と地階に分かれています。 この展覧会は、観客層をはっきりと二層に絞り、展示内容を構成しました。 一階はこどものためのワークショップの空間としました。 こどもたちは科学者中谷宇吉郎のことなど一切知りません。 それで一向に構いません。 「暑い夏に雪?それって何だろう」とこどもさんたちを誘い込むことが出来るかどう か、来てくれたこどもさんたちとわたしたちが本気でやり取りできるかどうかです。 「おとなもかつてはこどもだった」の精神で、まるごと交歓できたなら、わたしたち がこの展覧会を開いた甲斐があるということになります。 ぜひそうしたいと思っています。 人工雪やダイヤモンドダストの実験を楽しみながら、遊びだけで終わらせない仕掛け。 こどもたちが自分の手で雪を作る作業を通して、身近な科学に知らず知らず興味を持 ってもらうための工夫。 オープンまでの残された日々、全員精一杯準備作業に取り組 んでおります。 地階のフロアは、中谷宇吉郎と同時代を生きた方々を対象に構成します。 中谷宇吉郎の随筆に親しんでお越しいただく方、科学的関心から足を運ばれる方、中 谷宇吉郎の南画を楽しみにご覧下さる方、いろんなアプローチがあります。 展示する分量は決して多くはありませんが、ある心地よさの空間にはなるはずです。 夕方からは、お勤めがえりの方々にも足をお運びいただけるよう楽しいイブニングト ークの時間を持ちました。 魅力的なゲストの口からさまざまに語られる中谷宇吉郎像は、真夏の宵の上質な夕涼みの一方法かと思いお誘い申し上げる次第です。 最後に、中谷宇吉郎の次のような言葉でしめくくらせていただきます。 「地球の内部が火の玉であるというと(略)おそらく殆どすべての子供たちは、そんな こと分かりきってるさと答えるだろう。その答えは二重の意味で考えてみる必要があ る。第一は分かりきってると思い込んでいる点であり、第二は、もっと大切なことで あるが、それにあまり驚かないことである。」 「そんなことは分かりきってる」と思い込んでいるところには「それはなぜ?」とい う疑問は生まれない。驚きを感じないこころからはどんな探求もはじまりません。 中谷宇吉郎の言葉をこどもだけではなくかつてのこどもたちにも届けたいと願っています。 |
2001年7月4日 中谷宇吉郎展2001実行委員会一同 |